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(10)BtoB EC 事業者間取引をWeb化するメリット

BtoCとBtoBでのEC(ネットショップ)の違い

消費者向けのBtoCと事業者向けのBtoBでは、ネットショップの仕組みは変わってきます。一番大きな違いは、BtoB ECは「価格」と「商品」がコントロールできることです。

事業者間取引(BtoB)では、販売価格は取引先ごとに異なります。BtoCのネットショップでは1物1価になりますが、BtoBでは同じ商品でも取引先によって価格を変更できる機能が必要です。

また商品についても、取引先限定の商品型番を用意している事業者も多いでしょう。取引先によって、EC上で表示して購入できる商品を変更していくこともBtoB ECの重要な機能です。

一昔前までは、BtoB ECの導入には大きな費用がかかり、中小企業が導入するのは難しかったです。しかし近年、安価なBtoB ECサービスが増えており、中小企業でも導入できる価格帯に下がっています。

BtoB ECを導入するメリット

それでは実際にBtoB ECを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

業務効率化の効果は絶大〜事務処理が減る!

事業者間の取引がECで実現できれば効率化効果は圧倒的に大きいと言えます。今までは、電話の注文があったら、電話を受ける時間、電話内容をメモにとり、社内受注システムに登録といった様々な作業が発生していました。しかし、BtoB ECを導入したら、これらの作業は全てなくなります。FAX受注やメール受注も同様です。

今までの受注処理は、自社の社員が社内システムに登録していたのに対して、BtoB ECでは、取引先が自社の代わりに登録してくれることになります。

これは、飲食店が自販機やモバイルオーダーを導入するのと似ています。ランチ時の繁忙時間帯では、店舗スタッフの不足で注文を取るのが遅く、ボトルネックが発生している店舗をよく見かけます。そのためお客様が自分で注文できる自販機を導入したり、近年では自分のスマホで注文できるモバイルオーダーを導入しているお店も増えています。店舗が行っていた受注作業を、お客様が実施するため、お店にとっての効率化効果は大きいわけです。そして、お客さま側も注文待ちでイライラすることが減り、食事が到着するまでの時間が短くなるので双方にメリットがあります。

BtoB ECでは自社で行っていた受注処理をお客さまが直接行うことによって、無駄な作業が減ります。さらに、見積書や請求書のやり取りといった紙の作業も減ります。これも取引先の方で書類をダウンロードしてくれるわけです。在庫の確認も楽になるでしょう。BtoB ECと在庫システムが連動していれば、自動で在庫の引き当てをしてくれるわけです。

このように、BtoB ECによる、業務効率化効果は絶大だと言えます。

BtoB ECの導入で売上は上がるか?

事業者間の取引をネットショップ化したからといって自動的に売上が上がるわけではありません。ただ、取引先とECでつながるわけですので、発注する側も発注しやすくなります。ついで買いや、まとめ買いなどで十分に売上アップのチャンスはあるでしょう。

また、注文のしやすさから、お客さまを囲い込むことができ、ライバルの他社への流出を防ぐ効果も期待できます。

ただし、新規顧客を獲得するためには、キーワードの検索順位を高めたり、SNSの情報発信など、BtoCのECと同様に継続的な取組が求められます。

なぜ中小企業では導入が進んでいないのか?

このように、効率化効果を中心に良いところばかりが目立つBtoB ECですが、中小企業ではなぜ普及していないのでしょうか。それは、BtoB ECが自社だけで導入できるものではないからです。取引先に電話注文をしたい、いやFAX注文がいい!と言われてしまうと、BtoB ECを導入することはできません。

BtoB ECを実現する際には、取引先に注文をネット経由でしてくださいとお願いして、承諾して貰うことになります。ネット注文に慣れていない取引先には注文の仕方を教育することも必要になるでしょう。取引先を巻き込んで準備することが求められるため、そのハードルが越えられなくて、導入していない事業者も多いわけです。

では、導入せずにこのまま現状維持でよいのでしょうか。近い将来に、多くの取引がデータでネット経由となることが予想される中、自社も取引先もどんどん取り残されていくことになります。

前回の記事の中でも紹介したDXの実現とは、経済産業省の定義によると、「顧客起点の価値創造のための事業の変革」とあります。自社単独で受注管理システムを導入してもDXしたことにはなりません。BtoB ECのように取引先顧客を巻き込んで、自社にも取引先にもメリットがある取組が求められています。

みなさんも、取引先を巻き込んで、一緒に成長していくために、BtoB ECの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の筆者

㈱にぎわい研究所 代表取締役 村上知也

IT企業に13年の勤務の後、2008年に中小企業診断士登録。中小企業のデジタル化やWebマーケティングの支援を中心に活動中。
商工会議所などの多数の公的機関においてデジタル・IT関連のセミナーを実施している。