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(9)事業者間(BtoB)取引のデジタル化が遅れている日本

日本のデジタル化の現状

長年に渡って日本のデジタル化は諸外国に比べて遅れていると言われます。日本のGDPはここ数十年横ばいが続いている一方で、ICT投資も同じように横ばいが続いています。日本はGDPが成長していないのでICT投資ができなかったのか、逆にICT投資が進まなかったのでGDPも成長できなかったのか。どちらも考えられますが、米国に比べてICT投資が遅れているのは数値が物語っています。

コロナ禍で事業者や国民への給付金支給時にも、各自治体のデジタル化が進んでおらず、手作業で業務負荷が高かったというニュースも散見されました。一方で、IT導入補助金等の補助金はデジタルで全て申請が完結できるようになっています。デジタル庁が創設され、その他にも様々なデジタル化施策が今後も実施されるので、日本のデジタル化の進展をますます期待したいです。

特に日本が遅れているのは事業者間のデジタル化

一口にデジタル化と言っても様々な分野があります。令和3年の情報通信白書を確認すると、日本は事業者間のデジタル化が遅れているとのデータがあります。例えば、以下の図表は社内の決裁処理と社外の契約処理の電子化の状況を、米国、ドイツと比較したものです。

社内の決裁処理の電子化比率は、他国と比べて大差がありません。大企業を中心に社内のデジタル化は進みつつあります。一方で社外のデジタル化、例えば契約処理の電子化の割合は他国と大きな差がついています。

筆者も、未だに大企業と契約を結ぶ際には、捺印を求められ、紙でやり取りをするケースがあります。一方で、中小企業でも契約処理を、クラウドサービスを使ってデジタルで取り交わすケースも増えています。

事業を効率的に行っていくためには、自社内だけのデジタル化では限界があります。取引先、顧客を巻き込んでデジタル活用が進めば、更に効率が高められ、DX(デジタルトランスフォーメーション)につながるのではないでしょうか。

DXの取り組み

それではDXとは何を実現することなのでしょうか?経済産業省が取りまとめているDXレポートから内容を確認します。

DXには「未着手→データ化→デジタル化→DX」というステップがあります。

未着手というのは、例えば手書きの伝票を人手で実施している状態です。

次にデータ化の段階では、エクセルなどの表計算ソフトを使って業務を実施している状態です。この段階で業務を行っている中小企業はかなりの数になるでしょう。

そしてデジタル化が進めば、例えば受注システムを導入して、顧客データや受注のデータをシステムで管理している状態です。

さらに「顧客とのE2Eでのデジタル化」とはエンドツーエンド、つまり端から端までデジタル化を実現することです。社内での受注処理だけではなく、顧客からの発注も含めてデジタル化できれば、DXを実現したと言えるでしょう。

事業者間取引のデジタル化はBtoB ECとも呼ばれ、DXの取り組みの中で注目が高まっています。

BtoB EC市場の動向

それでは、BtoB ECを含めたEC市場の動向を確認します。コロナ禍においてECの市場の状況は大きな変化がありました。巣ごもり需要により消費者向けのネットショップであるBtoC ECの物販は20%以上の大幅な伸びを見せました。一方で、サービス分野のネットショップ、具体的には飛行機、ホテル、飲食店の予約サービスなどは大幅に縮小しました。BtoB ECも5%の減少でした。

消費者向けのネットショップの伸びが目立ったものの、金額ベースでは事業者間取引の方が圧倒的に大きくなっています。大手企業はすでに事業者間の取引のデジタル化が進んでいるためです。一方で、中小企業では事業者間取引をデジタル化できているところはまだまだ少ないでしょう。

中小企業がDXを実現していくためには、この事業者間取引をデジタル化していくところから考えていきたいです。次の記事では、BtoB ECの導入の取り組みについて紹介していきます。

この記事の筆者

㈱にぎわい研究所 代表取締役 村上知也

IT企業に13年の勤務の後、2008年に中小企業診断士登録。中小企業のデジタル化やWebマーケティングの支援を中心に活動中。
商工会議所などの多数の公的機関においてデジタル・IT関連のセミナーを実施している。