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お役立ちコラムインボイス制度やIT導入補助金について
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(2)インボイスで影響を受ける事業者

インボイスの影響が出る取引

前回の記事では、インボイス制度の概要と影響をお伝えしました。では、インボイスはどのような事業者に影響するのでしょうか? 以下の図表の通り、免税事業者はもちろん影響がありますが、本則課税の事業者で免税事業者に発注する事業者にも影響があります。

それではどんな業界で影響が大きいでしょうか。免税事業者である、小規模な事業者との取引が多い業界は特に注意が必要です。

業種ごとの正確な免税事業者の数はわかりませんが、売上1,000万円以下の事業者数データを確認します。令和3年中小企業実態基本調査(令和2年度決算実績)によると、宿泊・飲食サービス業は33万者、生活関連サービス業は29万者、小売業は25万者存在します。また、BtoBの企業間取引が多いである不動産業では15万者、製造業11万者、建設業10万者となっています。

BtoB取引をしている免税事業者は注意〜 例えばIT業の受注側の場合

それでは個別の業界で考えてみましょう。例えばIT業の場合です。

IT業界では、受注側としては個人業主のフリーランスとして活動されている方々多くなっています。IT人材白書2016を確認してみると、年収1千万円を超えるITフリーランスは30代で8.8%、40代で6.2%、50代で2.3%となっています。そうすると多くのITフリーランスは売上1千万円以下の免税事業者であると想定されます。

インボイスを発行するためには、課税事業者になる必要があります。つまり消費税を納税していかねばなりません。

ITフリーランスに発注するのは、多くは事業者(BtoB取引)でしょうから、取引を切られないためには課税事業者登録の対応が求められます。

悩ましいところですが、技術力が高く取引先に対して交渉力を持つフリーランスなら免税事業者でも取引が継続するかもしれません。しかし、そういった優秀な技術者は、最初から1千万円を超える年収になっている可能性はあるでしょう。

現状免税事業者のフリーランスの対策としてはより自力をつけ、単価をあげて納税負担に耐えられるようにせねばなりません。

業務委託契約が多い事業者は注意〜IT業の発注側の場合

逆に、発注側も悩ましいところでしょう。特に、中小IT企業は多くのITフリーランスと取引しています。インボイスを発行しないITフリーランスとは取引を止めてしまうという選択肢もあります。しかし、現状の開発要員不足の中ではITフリーランスは貴重です。

取引での力関係次第になりますが、中小IT企業の方が弱く、インボイスを発行しないITフリーランスとも取引を継続せざるを得ないケースもあるでしょう。

その場合は、中小IT企業の納税負担が増えてしまいます。そうならないためにも中小IT企業は、インボイス制度が始まる前までに、取引のあるITフリーランスを啓蒙して納税事業者になってもらうことも必要でしょう。

他にどんな業種に影響が出るか?

ここまでIT業での影響を考えてみましたが、他にはどんな業界に影響が出るでしょうか。例えば、建設業も一人親方の個人事業主が多いために影響は大きいでしょう。また、美容室も業務委託で美容師を雇っている場合は、インボイス制度の影響を受けることになります。

また、飲食業やタクシー業では、お客さまが消費者の場合には、インボイス制度の影響はありません。しかし、会社での利用で領収書を求めるお客さまはBtoB取引になりますから、インボイスの発行が求められることになります。

さらに、業種には関係なく、オフィスや店舗を賃貸している場合は、大家がインボイスを発行できるか確認しておきましょう。大きな不動産屋の場合は、問題ないでしょうが、小規模のインボイスを発行できない大家も一定数存在すると考えられます。

このように、様々な業界でインボイスの影響は発生しますので、当社は免税事業者ではないので、影響はないと考えてしまわず、取引先の状況を確認しておきましょう。意外と影響範囲は大きいものです。
なお、国税庁のホームページで適格請求書発行事業者か否かを確認することができます。
(適格請求書発行事業者公表サイト )

この記事の筆者

㈱にぎわい研究所 代表取締役 村上知也

IT企業に13年の勤務の後、2008年に中小企業診断士登録。中小企業のデジタル化やWebマーケティングの支援を中心に活動中。
商工会議所などの多数の公的機関においてデジタル・IT関連のセミナーを実施している。