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お役立ちコラムインボイス制度やIT導入補助金について
よくわかる記事を紹介
(3)インボイス制度のシステムへの影響
影響の出る業務範囲
インボイスの導入ではシステムにどのような影響がでるでしょうか。直接的には、請求書に登録番号を記載することになります。それ以外にも第1回の記事で請求書の書式を紹介しましたが、税率ごとに区分した消費税額等の記載も新たに必要です。ですから請求書を発行する、受注管理システムや、会計システムは対応が必須となります。
また、店頭での領収書も書式の変更が求められます。レジや券売機の対応が必要でしょう。ネットショップは、多くのお客さまが消費者ですので、その場合はインボイスの対応は不要ですが、事業者として購入するお客さまも存在しますので、やはり対応が求められます。BtoB用のネットショップはもちろん対応必須と言えます。
なお、適格請求書等保存方式においても、買い手が作成する一定の事項が記載された仕入れ明細書等を保存することにより仕入税額控除の適用を受けることができます。その場合は、発注関連のシステムにも影響が出ることになります。
システムだけではなく、エクセルなどの表計算ソフトで請求書書式を作っている場合は、書式を変更せねばなりません。
なお、請求書の書式については第1回の記事で触れたため、ここでは領収書の書式について記載します。不特定多数の者(消費者)に対して販売を行う場合は、適格簡易請求書を交付できます。スーパーなどの小売業や、飲食店業、タクシーなどが対象になります。いわゆる領収書ですね。領収書もインボイスになりますが、請求書よりは書式が簡易です。
領収書も請求書と同じく、①登録番号や、⑤税率ごとに区分した消費税額が必要になります。ただし、⑤については適用税率でもOKです。手書きの領収書を使っている時には項目に漏れが無いかを注意しましょう。特に、飲食店で店内飲食と持ち帰りを頼んだ場合は、税率ごとの区分すなわち、8%と10%に分けて消費税額を記載せねばなりません。
なお、クラウド型のレジでは、領収書形式はバージョンアップすれば自動で変更される可能性が高いです。しかし、手書きの領収書は、そうはいきませんので、登録番号や税率ごとの消費税額、又は税率などの記載できる書式を用意しておきましょう。
端数処理の変更
細かい内容になりますが、書式だけでなく、小数点以下の値が発生する場合の端数処理にも注意しなければなりません。適格請求書では、税率ごとに1回の端数処理をします。そのため、個々の商品毎に消費税額を計算して、端数処理をして合計することは認められません。
会計などのシステム利用の方はシステムがバージョンアップすればシステム側で対応してくれるでしょうから、それほど心配はいりませんが、社内でエクセルなどの表計算ソフトで数式を入れて計算している場合は、誤りが発生しがちなので、事前に確認しておきましょう。
請求書の未来
インボイス制度の導入により請求書の書式や管理する項目は変更されます。また、今後も消費税率の変更が予想されるため、手書きや、オフィスソフトでの請求書で業務を運用していくのは負荷が高いでしょう。電子帳簿保存法の改正に合わせて、システム化の検討を進めたいところです。
さらに、システムも社内だけで完結するアプリではなく、インターネットのクラウド上で利用できる請求書サービスの活用を検討すべき時期に来ています。それは、請求書や見積書は外部の取引先とやり取りするものですから、やり取り自体をネット経由にできれば更に効率化が進むわけです。
日本はよく、諸外国に比べてデジタル化が遅れていると言われますが、特に遅れているのが取引先とのやり取りのデジタル化です。
今までは各ベンダの提供する請求書サービス間の連動性は殆どありませんでした。同一サービス間では請求書を取り込むと自動で会計処理までできますが、他社の違うサービス間では、結局、データで取り込めず請求データを社内のシステムに再度入力するという状態です。
社外のやり取りも含めて生産性を高めるため、企業間でやりとりする請求書の完全なデジタル化をめぐり、政府と会計ソフト会社など約70社は標準ルールとして国際規格を導入すると発表されています。(出典: 日経新聞電子版 2020年12月14 「請求書、企業間で完全デジタル化 22年10月に国際規格」)
こういった規格が普及すれば、請求書をデータでもらったら、そのまま入力せずに経理処理までできるため、劇的に業務効率化に寄与すると考えられます。
報道では2022年10月をめどにサービスを開始し、インボイス制度のスタートする2023年度中に日本全体での普及を目指すとされており、これは非常に楽しみな取り組みとなっています。
今後のインボイスへのシステム対応の取組
インボイス制度に対するシステムの対応は、軽減税率の導入時に比べれば負荷は高くないでしょう。書式の変更のバージョンアップ時期など、システム会社に確認しておきましょう。
また、インボイスに関しては、自社だけの対応ではなく、取引先が対応できているかも確認しておかねばなりません。2023年の10月までまだ時間はありますが、直前になって慌てないように、早めの対応を検討しておきましょう。
この記事の筆者
- ㈱にぎわい研究所 代表取締役 村上知也
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IT企業に13年の勤務の後、2008年に中小企業診断士登録。中小企業のデジタル化やWebマーケティングの支援を中心に活動中。
商工会議所などの多数の公的機関においてデジタル・IT関連のセミナーを実施している。