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お役立ちコラムインボイス制度やIT導入補助金について
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(5)IT導入補助金2022年の全体像

IT導入補助金の目的

IT導入補助金は、設立されて2022年で6年目の制度となります。名前の通り、ITを導入する際の補助金です。年度によって、重点的に補助額や補助率が引き上げられる分野があり、来年に迫ったインボイスの導入に関しては条件が良くなっています。インボイスについては以前の記事をご確認ください。

本年度のIT導入補助金の制度の目的を公募要領から確認します。中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイスの導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が生産性の向上に資するITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する事業費等の経費の一部を補助等することにより、中小企業・小規模事業者等の生産性向上を図ることです。

IT導入補助金の特徴

それでは、まずIT導入補助金が他の補助金制度と比べてどんな特徴があるのかを確認します。

①オンライン申請可能
コロナ禍において、行政サービスのオンライン化が進んでいます。そんな中、IT導入補助金は、スタートした6年前からオンラインだけで申請が完結するという画期的なものでした。今ではオンラインで申請できる補助金も増えていますが、その先駆けだったと言えるでしょう。
②作文が基本的に不要
多くの補助金申請では、事業計画を作成して、自社の強みやどのように売上を上げていくかの文章を作成する必要がありました。例えば持続化補助金であれば、A4で8枚程度の資料が求められます。事業者の方々にとって、申請の負担は重いでしょう。一方で、IT導入補助金では文章を書く部分はとても少ないです。類型によっては事業計画書の提出は求められますが、シンプルな書式となっています。
③IT導入支援事業者が一緒に申請してくれる
オンライン申請は初めての事業者にとっては操作面のハードルが高い場合もありました。そこでIT導入補助金では、IT導入支援事業者が申請をサポートしてくれる仕組みになっています。そのため補助金を申請する前に、「IT導入支援事業者」と実際に導入する「ITツール」を選定しておかねばなりません。
④事前に登録されているソフトウェア等のみが対象となる
そして、③のようにIT導入支援事業者と共同で申請するわけですが、対象となるITツールは、IT導入支援事業者が事前に登録したものだけです。未登録のITツールの補助金申請はできません。

IT導入補助金の「枠」について

IT導入補助金は目的に応じていくつかの枠が設定されています。以前から存在するのが通常枠で、様々なソフトウェアが対象になっています。ただし補助率は1/2で、クラウドサービスなどの費用も1年分のみが対象です。

一方で、今期の目玉として新設されたのがデジタル化基盤導入枠です。その中でもデジタル化基盤導入類型は、インボイス制度への対応が必要になる、会計/受発注/決済/ECといったお金周りのシステムサービスの補助率が引き上げられています。

POSレジや券売機といったハードウェアも対象となっています。ただし、昨年のような補助金申請前に購入したもの後から申請する遡及はNGです。

【IT導入補助金の枠の種類について】

種類 概要 主な補助額や補助率
通常枠
AB類型
以前から継続している生産性を高めるITツールの導入に対して補助される。ITツールの範囲は多種多様。 1/2補助。最大450万円だが、ERPのような複数の業務範囲に跨がらない限り150万円未満。クラウド費用は1年分。
デジタル化基盤導入枠
デジタル化
基盤導入類型
(今期新設)
インボイス制度への対応も見据えつつ、企業間取引のデジタル化を強力に推進するため、「通常枠」よりも補助率を引き上げて優先的に支援。→会計/受発注/決済/ECが対象    ・50万円までなら3/4補助
・50〜350万円までなら2/3補助
・クラウド費用も2年分
・一部ハードも1/2補助 
デジタル化基盤導入枠
複数社連携
IT導入類型
(今期新設)
商業集積地の複数の中小企業・小規模事業者等が連携してITツールを導入することにより生産性の向上を図る取組に対して、「通常枠」よりも補助率を引き上げ支援する。 複数社連携で最大3,000万円まで補助される。
セキュリティ対策推進枠
(今期新設)
IPA(情報処理推進機構)の提供する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスのみ利用できる。        ・100万円 1/2補助
・サービス料は最大2年間  

それ以外にも、複数社が連携して商店街や街のIT化を進めようという複数社連携IT導入類型や、セキュリティの脅威に対応していくためのセキュリティ対策推進枠も新設されています。

次の記事では、「デジタル化基盤導入類型」について詳しく解説していきます。

この記事の筆者

㈱にぎわい研究所 代表取締役 村上知也

IT企業に13年の勤務の後、2008年に中小企業診断士登録。中小企業のデジタル化やWebマーケティングの支援を中心に活動中。
商工会議所などの多数の公的機関においてデジタル・IT関連のセミナーを実施している。